水野和夫の資本主義論22.10.20
水野和夫さんは法政大学教授で「資本主義の終焉と歴史の危機」という本を書いている。同名の講演会がグリーン連合主催で、2018年3月29日(木)、文京区民センターで開催された。以下に講演内容というより水野さんの主張の要約を記してみる。
<要約>
・資本主義は地球上のどこを探してもフロンティアが残されていないことからその死期が近づいている。資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまりフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本に自己増殖を推進していくシステムとしている。アフリカのグローバル化が叫ばれている現在、地理的な市場拡大は最終局面を迎えており、もう地理的なフロンティアは残されていない。また金融・資本市場を見ても、各国の証券取引所は株式の高速取引を進め、百万分の一秒、一億分の一秒を争う取引ができるようなシステム投資を進めている。この「電子・金融空間」の中でも時間を切り刻み、一億分の一秒単位で投資しなければ利潤を上げることができなくなっている。「地理的・物的空間」からも「電子・金融空間」からも利潤を上げられなくなっていることは、資本主義を資本が自己増殖するシステムであると捉えれば、そのプロセスである資本主義が終わりに近づきつつあるというのが分かる。さらに重要な点として、中間層*1)が資本主義を支持する理由がなくなってきていること。それは自分を貧困層に落としてしまうかもしれない資本主義を維持しようとするインセンティブがもはや生じなくなっていること。こうした現実を直視するならば、資本主義が遠くない将来に終わりを迎えることは必然な出来事だと言えるはずと述べている。
註:*1)マルクスが歴史的必然であるとした唯物史観である資本主義から社会主義・共産主義への転換が進まなかったこととして、プロレタリアの窮乏化があげられるが、失業対策、労働・福祉政策等により資本主義が進化しそれなりの発展、中間層が拡大したことを言っている。
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彼の提案は、現実的ではなく、実行可能性や効果性に欠けるというものです。例えば、彼は資本主義から脱却するために、「ゼロ成長社会」や「共同体経済」などの代替的な経済システムを提唱していますが、これらのシステムがどのように構築されるか、どのようなメリットやデメリットがあるか、どのような社会的・政治的・文化的な条件が必要かなどについて具体的な説明が不足していることが指摘されています。また、彼は資本主義から脱却することが人類や地球環境のためになると主張していますが、それが必ずしも正しいとは限らないことも指摘されています。
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資本主義や成長信仰がもたらした社会的・環境的・倫理的な問題に対して、深刻な危機感や不満を抱いている人。例えば、貧困や格差、気候変動や資源枯渇、消費主義や物質主義などに関心が高い人です。
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資本主義や成長信仰がもたらした経済的・技術的・文化的な恩恵に対して、満足感や感謝感を持っていない人。例えば、豊かさや便利さ、多様性や自由などに価値を見出さない人です。
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資本主義や成長信仰がもたらした社会的・環境的・倫理的な問題に対して、根本的な解決策として、資本主義から脱却し、新たな経済システムを構築することが必要だと考える人。例えば、ゼロ成長社会や共同体経済などの理念に共鳴する人です。
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資本主義から脱却し、新たな経済システムを構築することが可能だと信じる人。例えば、水野和夫の分析や提案に説得力や現実性を感じる人です。
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『資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)』3: この本では、資本主義の本質は「中心/周辺」という分割にもとづいて、富やマネーを「周辺」から「蒐集」し、「中心」に集中させることであると説明しています。しかし、近代を支えてきた資本主義というシステムは、金利がゼロに近づくことで利潤率がゼロになり、資本主義の「死」を意味すると主張しています。彼は、一六世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい、混沌をきわめていく「歴史の危機」に我々は立っていると警告しています。
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水野和夫氏は、人類史に精通する経済学者として、資本主義の歴史的な発展とエネルギー・食料・国家との関係を分析し、資本主義の終焉と歴史の危機を予測しました。