菅総理の脱炭素社会宣言に思う!

菅総理の脱炭素社会宣言に思う!

令和2年10月に菅総理所信表明演説で、我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、と宣言した。地球環境保全を目的に活動していた私にとって、信じられないことであった。とはいえ欧州や国連は5年前の「パリ協定」を採択して以来、着々と削減強化を進めていたので遅ればせの感は否めません。

私も70年代に公害担当者として県に職を得て以来、80年代半ばから地球環境問題に取り組み、90年代以降、地球温暖化防止活動にも取り組んできた。地球環境の危機は一般にも啓発が必要ということで、2005年には仲間とともに環境NPO法人を設立し、以来15年間活動を継続している。

菅総理の脱炭素化宣言により、やっと地球環境への危機感が伝わったかなという思いが湧くとともに、具体的な対応策が気になりはじめた。宣言では温暖化への対応は経済成長の制約とならないと述べ、むしろ産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるとしている。鍵となるのは、革新的なイノベーションであり、省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーの最大限導入と石炭火力発電を抜本的に転換するとしている。原子力は安全最優先。

しかし、急激な脱石炭は鉄鋼や電力業界などには厳しい目標です。再生可能エネルギーは狭い国土の日本にどのくらいの適地があるか大変不安です。陸地の風力発電は北海道や青森・秋田県が適地としてあるが、太陽光発電は今のところ平地の空地や地域の森林や里山に設置されている。宮城県内ではゴルフ場跡地や里山等が開発され禿山となり、雨天時の河川への流出速度が大きくなり豪雨災害のリスクが高まっている。

一方、住宅の屋根や工場の屋根などはまだ活用の余地がある。また農地を活用して作物を栽培しながら発電する営農発電は多いに期待されるが、これらをもって国内だけで既存の発電所分をすべてカバーできるか私には分からない。

現在、私自身も50kwの小さな発電所2か所を5年間運営している。ただ機器の劣化もあり、あと15年で更新するか否かの判断をしなければならない。その場合、コスト的にメリットがなければ止めるつもりだ。メガソーラ業者などは「FIT(高値買取制度)」があって利益があるから設置しているので、損するのであれば辞めるだろう。利益を求める資本主義の原理を生かしつつ、太陽光発電が成り立つのか、国土の狭い日本では無理で海底ケーブルなどにより大陸諸国と送電線を結び中国などの砂漠で発電した電気を買ってくるのか、はたまた地球環境を救う(地球を地救する)ため強制的・政策的に続けさせるのか、今の私には再生可能エネルギーによる未来社会を描くのは困難だ。

今、世界人口は78億人だ。1987年は50億人だったので、毎年約8千万人ずつ増えている。この人口増加が続けば2050年には100億人超となる。世界は成長しなければ食べていけない。にもかかわらず地球環境の危機に対して、脱成長とか、資本主義は成長しなければ終焉するとか、脱石炭・脱原子力以外は正義ではないというような「環境ファッショ」的な論調も聞こえてくる。

地球環境の危機に対して、私は省資源、省エネ、循環型社会などの「社会のグリーン化」には大いに賛成だが強制的な社会の在り方には反対だ。菅総理の脱炭素社会宣言に共感しつつ、国民一人一人が質的に豊かで生きがいのある「(寛容な)グリーン社会」の到来を期待するものです。